6月25日 関電株主総会 3時間25分 
  市民の要望を無視 許せない!原発7基体制
 
 「ここ10年、関電は変わっていないな」ある出席者はインタビューにこのように答えた。関電株を保有している京阪神大阪市京都市、神戸市。この3つの行政都市が、脱原発への方針転換を強く求めているのに、全く無視し老朽原発を再稼働させた。市民の要望に応えようとしない傲慢さは全く変わらない。関電は市民の意見を聞く耳も持たないし、間違ったことを修正する力もない。一昨年の金銭不正授受問題にも関わらず、結局、会社の体質改善もできないことがはっきりわかった株主総会だった。
 「今年は少ないですね」警備のひとが漏らした言葉。出席者は昨年より少ない190人。広い会場に座席を空けて座るようになっている。会場前のアピール行動は20人くらいでおこなった。関電は株主総会の2日前、23日に老朽原発美浜3号を再稼働させた。運転開始から40年を超える原発の再稼働は、福島事故以降始めてだ。この老朽原発の再稼働によって、私たちは半世紀前の技術で作られた飛行機に乗せられているのと同じような運命にある。そういうことを会場前にいる社員、警備員、警察、三々五々入場する出席者に強く訴えた。
 「顔が見えない」これはマスクをしているからではない。全てが一本調子なのだ。大阪市京都市、神戸市、そして脱原発株主が何を言おうが「聞き置く」だけ。「資源のない我が国では…」のように抽象的、曖昧な国会的答弁に壇上の経営陣は終始する。アベウイルスが政界、財界に蔓延しているような感じだ。特に森本社長の答弁には人としての有り様が感じられなかった。
 会社の中期経営計画の説明の後、株主からの提案説明がおこなわれた。株主提案は全てで24議案。(私たちが7議案。もう一つの株主提案グループが5議案、大阪市京都市合同の提案が3議案、大阪市単独が7議案、京都市単独が2議案)株主提案の説明を1分でおこなうことを求められた。これに対して、大阪市代理人河合弁護士から「株主は提案を説明する権利がある」と議事運営に異議が表明された。それにもかかわらず森本社長は都合のいいように議事運営を強行する。そして、昨年は取り上げた「会社役員の半分を脱原発の考えを持つ役員に」という動議も無視する議事運営をおこなった。提案の説明に十分な時間を確保させることは来年の課題でもある。
 提案説明、質疑応答があったが、都合の悪いことは答えない。例えば、入札比率については「差し支える」として答えない。不正マネー問題が明らかになって、調達ルールを見直すとしたが、この「答えない」ということは、原子力部門の調達について改善されていない証左だろう。
 また日本原電と北陸電力に長年、電力供給がないのに、原発の維持費として支払いを続けてきたが、今年、北陸電力との契約はないことを明らかにした。
       ますます危険な老朽原発 
 関電の中期経営計画(2021年~25年)では、原子力7基体制を実現し、2025年には成長軌道に乗せるとしている。関電の決算資料によると、2016年の決算からは有利子負債が8500億円も増えている。原発安全対策費である約1兆700億円に匹敵する。ちなみにこの金額は近年発行された社債の総額にも相似する。
 関電の原発は巨額な借金返済の為、経営側からの数値目標の強い圧力にさらされることになる。原発に対しては継続運転の圧力がかかってくる。当然、定期検査や不具合に対する対応にも影響が生じる。関電が安全運転第一といっても、それが言葉だけであったのは今までのことがよく物語っている。関電の原発は非常に危ない。
 中期計画ではデジタル事業で350億円の利益を上げる予定としているが、一方で日本原電に年間約200億円を無償で支払っているのだ。他部門で一生懸命稼いで、その金を日本原電につぎ込むという構造。社員の士気が上がるはずもないだろう。 
 総会では最後に会社側議案、株主提案議案を議決する時間となる。以前あったような株主総会の前列を動員株主がしめ、「異議なし」などの一斉唱和はすっかりなくなっている。しかし、動員された株主は会場の過半を占めていて、株主提案に反対、会社側に賛成、という挙手は整然と意思統一されていた。
 総会終了後、会場の外で新聞記者たちの取材があった。関心のひとつは政府が脱炭素を目標を掲げ、各企業がどこに投資するかが記者達の関心事になっているようだった。私にも「関電が新しいことを言ったか」ということを尋ねられた。「原発固執して、安全対策費に建設費以上の金を投資し、方針を変えないどころか、リスクを国民に負わせるような会社に未来はない」と答えた。
 原子力は負債である。原発廃炉にし安全に精算すること、そして、原発不正マネーの全貌解明に協力すること、これが関電に課せられた任務である。

 追記  関電が答えたこと、答えないことにも書きましたが、関電は北陸電力志賀原発への支払いをやめました。年間約100億円以上を北陸電力支払っていたとされています。北陸電力の利益は約100億円前後。志賀原発の維持費、そして、再稼働を企むとしたら巨額の安全対策費の調達が必要となります。北陸電力にとって原発が負債となっていくでしょう。原子力村の亀裂と見るのか、注視が必要だと思います。